2023.05.24

女性ホルモンの働きやもたらす効果を解説

女性ホルモンの分泌量は年齢とともに変化し、心と体にさまざまな変化を与えます。女性ホルモンと上手に付き合っていくためには、年齢ごとの変化と、それによって心身にどんな効果がもたらされるのかを知ることが大切です。

 

女性ホルモンの基礎知識

女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、女性の健康と美容だけでなく、妊娠の成立と継続にも欠かせないものとなっています。また、月経周期を安定させる役割ももっています。月経周期は、月経終了から排卵までの卵胞期、排卵が起こる排卵期、排卵後から月経開始までの黄体期に分かれており、2つのホルモンがバランスよく分泌されることで、月経周期がコントロールされるといわれています。そのため女性ホルモンのバランスが崩れると、頻発月経や無月経、過少月経や過多月経が起こったり、生理痛や月経前症候群がひどくなったりするおそれがあるため注意しましょう。
女性ホルモンは卵巣から分泌されるため、老化によって卵巣機能が低下すると、女性ホルモンの分泌量が低下して体に支障が生じやすくなります。女性ホルモンは年齢や妊娠・出産によって分泌量が大きく変化するため、年齢や妊娠・出産に合わせた対応が必要になります。

女性ホルモンの効果

エストロゲンとプロゲステロンにはいろいろな効果があり、どちらの分泌量が多いのかによって心と体の状態が変化します。一般的にエストロゲンの分泌が多い卵胞期は心と体が安定しやすく、プロゲステロンの分泌が多い黄体期は肌トラブルが起きたり心が不安定になったりしやすい時期だといわれています。

エストロゲン

  • 子宮など生殖器官を発達させる
  • バストやヒップに皮下脂肪を増やし女性らしい体型に変化させる
  • 子宮内膜を厚くして妊娠の成立をサポートする
  • 骨の形成を促して骨量が低下するのを防ぐ
  • コレステロールを調整して健康をサポートする
  • 自律神経のバランスが乱れるのを防ぐ
  • 皮膚のコラーゲンを増やして肌を美しくする

プロゲステロン

  • 子宮内膜を柔らかくして妊娠の成立をサポートする
  • 体を整えて妊娠を維持しやすい状態にする
  • 乳腺を発達させる
  • 体に水分と栄養をため込むよう促す
  • 食欲をアップする
  • イライラするなど気持ちのコントロールを難しくする

年齢とともに変化する女性ホルモン

女性ホルモンの分泌量は年齢によって変化し、それにともない心と体にも変化が現れます。
年齢による女性ホルモンの変化と、それが心と体にどんな変化をもたらすのかをみていきましょう。

8歳~18歳

思春期にあたる8歳~18歳は、女性ホルモンの影響で心と体が不安的になりやすい時期です。7~8歳ごろになると卵巣から女性ホルモンが少しずつ分泌されるようになり、バストが膨らんだり、ヒップに皮下脂肪がついたりして女性らしい体型へと変化します。個人差がありますが、10歳~15歳で初潮を迎える女性が多くなっています。また、思春期は女性ホルモンのバランスが崩れやすいため、月経周期や月経量が安定しないことが増えるといわれています。人によって異なりますが、月経周期が安定するまでに3年ほどかかることが多いようです。皮脂の分泌が増えてニキビができやすくなる、初潮後に身長の伸びが少なくなるなどの変化がみられることもあります。女性ホルモンの影響や体の変化によって、イライラしたり気分の浮き沈みが激しくなったりするなど、心が不安定になることもあるようです。

18歳~44歳

成熟期にあたる18歳~44歳ごろは女性ホルモンのバランスが安定しやすいため、健康や美しさを維持しやすい時期です。性的に成熟して月経周期も安定しやすくなるため、心身が妊娠・出産に適した状態となります。妊娠・出産は女性ホルモンと密接に関わっているため、妊娠・出産を経験して女性ホルモンの変化を実感する女性も多いでしょう。出産(初産)の平均年齢は昔と比較して遅くなっており、現在は30前後で出産する女性が多くなっています。また、高齢出産の割合や不妊治療を行う女性も増えているようです。美肌ホルモンとも呼ばれるエストロゲンの分泌は20代でピークを迎えることから、20代になると肌の状態が安定して美しくなります。
30代後半になると卵巣の老化によってエストロゲンの分泌量が減り始めるため、人によっては30代後半~40代前半に更年期障害のような症状に悩まされる女性もいるようです。

45歳~55歳

更年期にあたる45~55歳ごろは、閉経によって女性ホルモンの分泌量が大きく変化する時期です。40代になると、卵巣機能の低下に伴いエストロゲンの分泌が減り始め、閉経前後にはエストロゲンの分泌が急激に低下するといわれています。個人差がありますが、50歳前後に閉経を迎える女性が多いため、閉経前後である45歳~55歳ごろに更年期障害と呼ばれる症状に悩まされる女性が多くなっています。更年期障害の症状には、発汗、ほてり、動悸、息切れ、頭痛、肩こり、尿漏れ、デリケートゾーンの乾燥、不眠などがあり、症状の現れ方や程度は人によって大きく異なります。イライラや抑うつ、やる気が出ないなど、気持ちのコントロールが難しくなる女性もいるようです。

56歳以降

卵巣機能の低下には個人差がありますが、60代になると卵巣機能が止まり、女性ホルモンがほとんど分泌されなくなるといわれています。そのため、60代以降は健康管理がより大切になります。骨の形成を促すエストロゲンの減少によって、骨密度が低下して骨粗しょう症になりやすくなるため注意しましょう。また、善玉コレステロール(HDL)が減り悪玉コレステロールが増える傾向にあるため、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞にも注意が必要です。肌のコラーゲンも減少するため、肌のハリや弾力が低下し、肌が乾燥しやすくなります。デリケートゾーンも乾燥するため、デリケートゾーンのかさつきやかゆみが気になることが増えるようです。

まとめ

女性ホルモンの分泌量は年齢によって変化していくため、年齢に合わせた対応が必要になります。
また、月経周期を安定させるには、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンのバランスを乱さないようにすることが大切です。健康と美しい肌を維持し、妊娠・出産しやすい体をつくるためにも、女性ホルモンの変化と向き合い上手に付き合っていきましょう。

この記事の執筆者:インコさん

正看護師として美容皮膚科をメインに勤務。美容皮膚科では、10代~60代まで幅広い年代の女性の脱毛も担当。多くの女性と接することで、体を美しく整えること、美しく年を重ねることの大切さを学ぶ。
デリケートゾーンを美しく整えたいと希望する女性が多いことから、フェムケアの必要性をより認識。
その後、卵巣嚢腫の手術を経験し、不妊治療のために退社。体外受精を経て1児の母に。
現在は、そうした経験を生かして医療や美容関連のライティングを中心に活動。
医療系記事では、疾病の基礎知識や対処法、美容整形の施術紹介など専門性の高いものを執筆。美容関連では、脱毛やスキンケアを中心に更年期障害やアンチエイジングケアなどのテーマを得意とする。