ブラジルも街はひっそり。不安な今、知っておきたい国によって違う医療制度
「目指せ!自由なオトナ女子 de ブラジル」by セニョーラプリマベーラ(岩井真理) Vol.4 ブラジルの医療事情 (海外で病気になったら大変!そんな時に知っておきたいその国の医療制度) 世界中が、コロナウィルスの恐怖に包まれている今日この頃、皆さん不安な気持ちを抱えて過ごされている事と思います。 当初、感染者がなく、対岸の火事を見るように呑気に構えていたブラジルですが、国民にとって大切なカーニバル休暇が終わる2月末に初めての感染者が出て、その後2週間であれよあれよと状況は変わって来ました。3月中旬からは、サンパウロを中心に厳戒体制となり、学校、商業施設、カフェやレストランも閉鎖となり、3/30からは空路による外国人の入国を完全にシャットアウトするなど、不安定な日々が続いています。 コロナウィルスの疑いがある場合は、専門の医療機関での受診が必要ですが、通常の場合は、どのような方法で診察を受けるのか、今回はブラジルの医療保険制度などについてお話ししたいと思います。 まず、日本は皆保険制度と言う、世界的に見てもかなり優れた制度があります。ブラジルでは、公共医療サービスは2つの種類があります。 1つは、SUS(Sistema Único de Saúde)という、完全無料の統一医療システムです。公共の無料医療療システム?と聞くと、何かとても良いものに思えますが、残念ながらその実態はなかなか厳しいものです。 そもそもSUSの財源は税収で、ブラジルでは「国民の義務と権利」としてこのサービスをベースに国民皆保険を目指しているのですが、当然これは理想に過ぎないと言わざるを得ません。無料なので、2億人の人口のうちの半分とも3/4も言われる低所得者の人々が、この医療サービスを利用しようとしますので、SUSの指定する病院は慢性的に混んでいます。笑い話ですが、「待たされてすぎて、待っている間に風邪が治っちゃったわ!」なんて話も聞きます。 加えて、治療も初歩的な処置のみにとどまり、入院設備の整った施設は不足しており、あっても都市部に集中しているので、うまく機能しているとは言えません。また、衛生的な問題も少なくないのです。 そこで、一般的には、もう1つの公共医療サービスであるPrivadoという実費払いのものを利用しています。実費払いですので、このサービスを利用することを前提に、中間所得層以上の人達は、予め民間医療保険プランに加入します。契約形態の多くは、企業が契約者となり従業員のための福利厚生として保険料を支払っています。なので、民間医療保険に加入していることは、安定した仕事に就けてる証であり、ブラジル人にとっては一つのステイタスとなっています。 プランは実に様々です。カバーできる治療範囲が異なるばかりではなく、受診できる病院まで決まっています。つまり、保険料の高いプランに加入すれば、それだけ良い病院で良い治療を受ける事が出来る訳です。 よく、ブラジル人がー 「◯◯さんは、良い病院に入院しているから、あの人はお金持ちね!」 などと言って、かかっている病院のランクから、その人が加入している医療保険を推察し、さらにその人の懐具合を推し量るような会話を交わします。 ブラジルで一番良いとされている保険プランは、Bradescoという銀行系(ブラジル4大銀行のひとつ)の保険会社のものです。ここの医療保険に加入していれば、最高水準の医療行為を最高の病院で受ける事が出来ます。有難いことに、多くの駐在員家族もこの保険で守られています。幸い私は、ブラジルへ来てから病気になってません。 が、このプランは病気の時だけでなく、人間ドックでオプションの検査(骨粗鬆症とか)を受けたい場合でも、大抵フリーで追加してくれます。それは、言い換えれば、予め高い保険料を払っているからです。 逆に、日本人駐在員の方に起こった、本当の話ですが、急性虫垂炎になられ、咄嗟のことで訳もわからず、激痛の中「良い病院へ!」と叫び救急車に運んでもらい、手術と1週間の入院をしました。いざ退院の時、あいにくその方の勤務先ではその病院に対応する医療保険プランには加入していないという事が判明し、日本円で約120万円程の請求書を受け取った、という現実もありました。 このように、SUSを補完するための民間医療保険システムが併用されている、ということで、かなり複雑なのがブラジルの健康保険事情です。 医療現場も複雑です。日本の総合病院のようにワンストップでは済まず、まず問診はココ、その後検査はココ、結果が出たら◯◯ドクターとアポイントメントを取って、ドクターのオフィスで指導をうける、と言ったように、あちこち行く場所が異なるのです。もし、複数の症状について指導を受ける場合は、それぞれにアポイントメントを取って医師を訪ねなくてはいけません。実に面倒くさい。 そこで、ブラジル人は普段はあまり病院へ行きません。ちょっとした風邪や腹痛、頭痛くらいの症状だと、殆どの人が街の薬局(farmácia)へ行きます。そして、薬剤師さんに自分の症状を伝えると、薬剤師さんはその症状から判断して、薬を出します。一部処方箋が無いと買えない薬(箱に、赤か黒の縞模様があるもの)以外は、薬剤師さんの判断で、かなり強い薬も売ってくれます。しかも、薬剤師さんが注射もしてくれます。(薬局の片隅で、立ったまま)日本とはかなり異なりますが、ブラジルでは薬剤師さんは町のお医者さん代わりで、重要な役割を果たしています。 ちなみに、ブラジルの市販の薬はとても強いです。体格も違いますし、日頃副作用の少ない日本の弱い薬に慣れている私達日本人が、まともに大人の分量で服用すると、大変!もし、ブラジル市販の薬を飲むのなら半分だけ服用することをオススメします。 前述した民間医療保険の加入カードを持っている場合は、これを提示する事で薬の割引を受けることも出来ます。 コロナ問題で、多くの施設が閉鎖される中でも、もちろん病院や薬局は開いています。実は、平素よりブラジルでは、薬局だけは24時間営業が多いです。コンビニのないこの国で、唯一時間に関係なく営業しているのがfarmácia 、それだけにブラジル人にとっての薬局の意味は、命に繋がる大切な場所と言えます。 さて、医療、治安、清掃、スーパーなど不可欠なサービスを除き、全てのレストランやカフェが、デリバリーを除き、閉鎖されている今、街中をよくよく見ると、ケーキ屋さんやスイーツのテイクアウトはやっているのです。 「デザートは人生に欠かせない!」と豪語するブラジル人達にとって、甘いものも生活に不可欠なアイテムの一つなんですね。 早く、世界中が心の底から笑える日が戻ってきますように。 *今までのブラジル情報は、「きれい生活研究所」Kireiライフキャリアのすすめブラジル発「駐妻」に転職しました!〜 ワーキングウーマン の ポジティブ ラテンライフ 〜にて御覧いただけます。 https://kireilife-lab.com/?cat=84 *「世界ウーマン」掲載中 https://www.sekaiwoman.com/columns/bom-brasil/ ]]>