2021.02.01

目指せ!自由なオトナ女子 de ブラジル Vol.12 地球の裏側、日本食材料調達の極意


目指せ!自由なオトナ女子 de ブラジル
by
 セニョーラプリマベーラ(岩井真理)

Vol.12 地球の裏側、日本食材料調達の極意

南米の中のアジア、アジアの中の日本の味 ~懐かしかったり、不思議だったり~

旅する楽しみのひとつは、地元の美味しいものを食べることです。海外に暮らすと、これが更にエスカレートして、名物料理だけでなく、地元B級グルメも試してみたくなります。私が気に入ってるのは、ポンデケージョ(チーズパン)とパステウ(ブラジル版揚げワンタン)です。今後一生、私の中のブラジルの味になること間違いありません。

【ポンデケージョとパステウ】

とはいえ、日々の食事は、日本にいた時と同じようなメニューで暮らしています。家ではご飯にお味噌汁、おかずは和洋中ごちゃ混ぜの日本の食卓です。カレーやシチュー、パスタなども日本にいる時とほぼ同じような頻度で登場します。ブラジル料理の代表フェイジョアーダやムケッカは、レストランで頂きますので、まずもって作ることはありません。
 
そんなブラジルは、ありがたいことに日系移民の人達の努力により、たくさんの日本の野菜が栽培されています。スーパーで、大根、椎茸、もやし、カボチャ、ネギ、白菜などを普通に買うことが出来ます。
地元カンピーナスには、これらの青果や卵をオーガニックで手広く売る「Yamaguishi organicos」https://www.yamaguishi.com.br/ があります。日系なので、日本名ヤマギシですが、綴りがブラジルっぽいでしょ?スペルミスではないですよ(笑)
日曜日には公園に出店して、地元でも人気です。他の海外に比べると、日本の家庭料理を作るための野菜は揃っていると思います。

【ブラジルの野菜】

また完璧とは言いづらいですが、レストランの一角がスーパーになっている「Nashi 梨」https://www.nashi.com.br という店も、車で15分くらいのところにあります。納豆やお豆腐が食べたくなったらちょっと行きます。ちなみに納豆、高いですよ!4個入りパックで20~25レアル(400~500円)します。従って、我が家では、一人1パックの納豆を食べることは、最も豪華な食事となります。

 

【納豆とお米】

もう少し車を走らせると、40キロほど離れたインダイアツーバ(Indaiatuba)という街があります。かつて多くの日系人が暮らし、今でも子孫達が様々な商売をしている小さな街です。日系企業の工場もいくつかあります。そこにも「Nakayoshi 」https://lojanakayoshi.com.br/mercado-oriental/というミニスーパーがあります。ここでは、日本のお米に限りなく近い味、と言われているウルグアイ産のコシヒカリ「すきや米」(そう、あの牛丼やさんが作ってます)が手に入ります。保温してしまうと味は落ちますが、炊きたてなら日本で食べる白米と遜色かありません。
コロナ以前は、ランチ時間帯に、日本のお総菜や家庭料理を提供するポルキで賑わうレストランも併設していました。ポルキロとは、ビュッフェ形式で好きな物をプレートに取り、最後に料理の重さで値段が決まる、ブラジルで最もポピュラーなランチスタイルです。他にもブラジル料理やアラブ料理のポルキロの店もあります。
スーパーでは、このレストランに並ぶメニューの一部が、売られています。何となく懐かしい味のするお惣菜です。月一回のペースで買い出しに行くので顔観しりになりました。必ずしも日本語を話すわけではありませんが、店員さんはみんなフレンドリーです。食材を探し求めて40キロも移動するわけですから、時間やガソリン代を考えると、我ながら見上げた執念です。

 

【日系スーパーナカヨシ】

更にサンパウロ市内まで行けば、大規模に日本食材を扱う店がいくつもあり、本当に何でも揃います。値段さえ気にしなければ、日本と同じ!と言っても過言ではありません。
かつて日本人街(現在は東洋人街)と呼ばれていたリベルダージ(Liberdade)という地区にある最大の日本食材店「丸海」https://www.marukai.com.br/は、いつでも大繁盛。様々な人種でごった返しています。経営者は、台湾の方だそうで、陳列は所々台湾の製品(パイナップルケーキとか)も並んでいて、楽しいお店です。ブラジル人から見たら、日本も台湾もあまり違いはないのでしょうね。

 

【サンパウロ市内】

しかし、リベルダージの街は、いつも信じられないくらいの人混みです。犯罪者も紛れ込んでいる恐れがあります。特に視界が悪くなる夕暮れともなると、レストランや小売店は強盗を警戒しています。かつて、日本から桃源郷を求めて移民してきた日系人達が、寝る間も惜しんで働き続けた街。地下鉄の駅名にさえも「日本」が付く歴史のある場所だけに、思い入れもあるところですが、私はここが苦手です。豊富な日本食材が揃っていても、何となく足が遠退く場所です。
 
そこで、リベルダージに代わり、よく利用するのはボンヘチーロ(Bom Retiro)という街です。元々は、アラブ、中東、地中海料理店などか集まる地域でした。最近はベトナムなどのアジアの味を提供するレストランや食材店が増えてきました。中でも、韓国系店舗が目立ちます。大きなスーパーマーケット、韓国料理店、カフェなどがたくさんあります。広い地区ではありませんので、車を駐車場に入れて、あちこち歩き回るのにちょうど良い範囲です。とはいえ、治安はさほど良くないので、街歩きは日中に限られます。
 

【ボンヘチーロの町並み】

そんなボンヘチーロで私が食材調達に行くのは、「Supermercado Otsugi」https://www.otuguism.com.br という、韓国スーパーです。私にとってのパラダイス!凄いスーパーなので、超お気に入りです。しかもリベルダージより、全体的に少しお安いので、さらに気に入ってます。100キロドライブで買い出しに来ているので、ついついあれもこれも買いたくなります。

 

【韓国系スーパー】

そもそも日本と韓国の料理は、味付けこそ大きく違いますが、使っている素材は共通のものが多いですよね。豆腐や練り物、野菜も大根、白菜、ネギ、椎茸、モヤシなど、韓国料理の素材はそのまま日本の家庭料理にも応用できます。ブラジルでは手に入りにくい薄切り肉やトンカツ肉も、ここならいつでも入手可能。冷凍が多いものの、海鮮類も豊富です。普通のスーパーではサーモンしかないので、ついつい買ってしまうのは、エビやイカ。
そして、何よりテンションが上がるのは、明太子が買えることです。明太子は本来韓国のものですから、売っているのは当然ですが、日本人の私達にとっても懐かしい味です。同じ売場には、豊富な種類のキムチもズラリ並びます。日本でも、お新香よりキムチが食卓に並ぶことが多くなっていると言いますので、確かに馴染み深い食品です。
冷凍の餃子やワンタン、調味料も韓国製品で十分代用ができます。麺類も韓国=冷麺のイメージですが、うどんやそばもあります。海苔も豊富です。カップラーメンやインスタントラーメンのコーナーも楽しいです。日本でも食べていた激辛カップ麺を見つけたとき、ちょっとジャンプ。お菓子コーナーも、どことなく日本の製品に寄ってて、チョコパイ、オススメです。お総菜コーナーは、韓国式のり巻き(キンパッブ)、春雨と野菜の炒め物(チャプチェ)、お好み焼き(チヂミ)等が並びます。どれも目移りします。
極めつけは、ベーカリーです。菓子パンやお総菜パンがあって、日本のパン屋さんに似ています。カレーパンやあんパン、クリームパンは必ず買ってしまいます。ブラジルのパン屋さとはまた違うラインナップにワクワクします。
 

【韓国スーパーの品揃え】

ここでは、韓国系ブラジル人たちが多く働いています。ブラジル人ではあるけれど、伝統に則り、礼儀を重んじる韓国の教育を受けている人が多いように感じます。レジには必ず二人以上のスタッフがいて、接客はとても丁寧です。笑顔で話しかけながらのレジ打ち、効率的かつ手際よく行われる袋詰めは、ややラフなブラジルの接客に慣れてしまっている私には、感動ものです。パン売場のスタッフに至っては、暗算で会計していて、ブラジルでは珍しい光景です。
 
 

【韓国スーパーて働く人達】

食料を購入するだけですが、この空間にいると、心地よく、安心します。遠いブラジルで手に入りにくい日本食材を探していると、達成感と共に「アジア」を強く感じます。同時に、アジアの中の日本という立ち位置にも、考えが及びます。島国ではあるものの、近隣の異国の影響を強く受けていて、その上に日本文化が成り立っているのだと。
 
当初、コロナ渦では、100キロ離れたサンパウロ市内まで買い物のために移動することはためらわれました。しかし、経済活動を勢いづけるために計画的にお店も開店するようになってから、スポットでこの韓国スーパーだけは行って帰って来ています。以前のように街歩きは出来ませんが、それでも日常を安定させるための日本食材調達に、ここは外せない場所なのです。
ウルグアイ産のお米で炊いたご飯の上に、冷凍してチマチマと大切に食べている明太子を乗せて味わえば、ブラジル生活至福の時です。
 
【夏空コラージュ】
 

*「世界ウーマン」掲載中
https://www.sekaiwoman.com/columns/bom-brasil/

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